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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(オ)835号 判決 1958年5月29日

上告人 小松嗣

被上告人 国

訴訟代理人 堀内恒雄 外一名

主文

原判決を破棄する。

本件を仙台高等裁判所に差し戻す。

理由

上告人小松嗣の上告理由について。

記録によれば、第一審判決の正本が上告人に送達されたのは昭和三〇年二月七日であること、同年二月一五日附第一審裁判所に宛てた訴状と題する書面が同月一七日同裁判所に提出されたこと、及び同年四月二八日附控訴状と題する書面が同月三〇日原裁判所に提出されたことの各事実を認め得べく、そして原判決は前示訴状と題する書面は控訴状と認め難く、従つて本件控訴は所定の期間後である前示控訴状と題する書面の第二審裁判所に提出された日に提起されたものと認めるの外はないから、不適法のものであつて、却下を免れないものであると判示していることは原判文上明らかである。

しかし、本件控訴期間内に提出された前示訴状と題する書面は控訴状とは標記していないが、その文面上控訴状と認められないことはなく、ただその方式が民訴三六七条二項所定の事項を完全に記載していないだけのことである。してみれば原裁判所は民訴三七〇条、同二二八条の規定に従い上告人に対し相当の期間を定めて控訴状の欠缺を補正すべき旨命令し、上告人においてこれに従わないときは該訴状を却下し、また、上告人において右命令に基き前示訴状を補正した書面を提出したとき、或は事前に同様の書面を提出したとき(前示控訴状と題する書面はこの書面と認めて妨げないであろう)は本案について審理判決をなすべき筋合であつたにも拘らず、ただ漫然と本件控訴を不適法として却下したのは、到底違法たるを免れない。従つて論旨は結局理由あるに帰する。

その余の論旨については判断を省略する。

よつて、民訴四〇七条一項に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 真野毅 斎藤悠輔 入江俊郎 下飯坂潤夫)

上告理由

一、昭和二十九年十二月十五日第一審判決に対する準備書面でその損害を賠償する責任がないとするなれば上訴する決意なりと釈明してゐる。法律に従ひて判決せず棄却されたので不服で上訴期間中同年二月十五日訴状を提起したのである。

其の後民事訴訟法第百九十四条の規定により判決の更正決定もなければ同法二百二十八条の規定により欠缺補正命令もなければ口頭弁論の通知もないので原判決を取消す(変行)さすには再審させる必要ありと思ひ同年三月五日再審の訴状提出したが判決は確定しておらず不適当なる事及び二月十五日の訴状と記録は仙台高等裁判所に送付された事実を知り、よつて同法第二百三十一条の規定により二重の訴提起の禁止も同年四月二十七日知つたので同法第二百三十六条の規定二項、三項の規定相手方の同意を得書面に依り其の再審の訴状のみ取下げたのである。

しかし判決に不服である趣旨に変りないが同年二月十五日の訴状は控訴状として不適式な事を知り同年四月二十八日直ちに同法三百六十七条第二項の方式に則り控訴状として提起しさらにそれに五月二日附属書類として提出二月十五日の訴状原判決に対し其の不服の理由に答弁しているにかかわらず口頭弁論の範囲は(同第三百七十七条)一方的であり故意に犯人にでつちあげ様とした証拠品小マツチを提出させなかつたのである。

二、本件が原告である控訴人自身で遂行して来た当事者訴訟で手続法規には精通していないと考えられるのは持論であるが其の訴状が不適式であればこと尚さらに欠缺補正命令(同三百七十条)すべきであつて、それもなくいたづらに口頭弁論二回も公開したる如く取下たる再審の訴特に一方的理由をつけて不適法として同第三百八十三条を適用したるは不当であり日本憲法基本的人権を無視したるものである。

三、責任ある指定代理人は山形地方検察庁で不起訴処分したる事訴願提起したる事も知りながら放火と断定したる証拠品及び其の犯人であつたと見なしたる証拠品を提出せず、又火災事件の真相を明らかにしやうともせず、あくまでも「うやむや」にしやうとする如きは日本憲法が国民に保障する自由及び権理を侵す不法行為である。

右日本憲法第十七条及国家賠償の規定により請求をなした上告状の理由書提出します。

以上 (原稿のまま)

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